だいたいうろ覚え

物忘れが激しくなってきたので備忘録

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー ブレイディみかこ

母親の本棚から拝借2

英国に住む母親が息子を取り巻く世界を描いたノンフィクション。ノンフィクションだから当然と言えば当然なのだが、各エピソードに脈略がないのですこし読みづらい。そして、人種差別やLGBTQなど世界共通の問題を取り扱ってはいるが、英国の生活やマインドがあまりにも日本のものとかけ離れているので、少しばかり他人事の様にも感じてしまった。こういう価値観の人たちがいるのだ、という勉強にはなる。

本編の感想からは少しずれてしまうのかもしれないが「子供が鋭いこと、本質的に見えることを言い、大人が驚き感心する」という構図が少し苦手だ。子供は純粋だから、みたいな神話はこの本に限らずよくある場面だが、子供が純粋なのではなく大人(そもそも大人-子どもの二項対立が気に入らない)が偏見にまみれているだけなのであって、大人側が取るべきリアクションは反省のみなのではないか。感心するとか、褒めるとか、大人の傲慢さが感じられてしまうのだが……。

ナショナリズムについて、"息子"は血筋による仲間意識みたいなものに疑問を抱いているようでそのくだりは面白かった。読みかけの別の本でもナショナリズムの話が出てきているので、これについてはその本について書いたときにでもまとめよう。

あとは差別用語のはなしも面白かったな。かつて差別用語として使われていた言葉を差別用語として使わない、むしろ親しみを込めた用語として使うという若者がいるという話だ。(本編ではそうした若者について批判的に描かれている)似たようなことを私も考えたことがあって、例えば「ホモ」「レズ」というのは蔑称として元々使われていた言葉で、その呼称で呼ばれるのを嫌がる人もいるという。しかしながらこれらの用語はBL・GL的な用語としてカジュアルに広く使われているのもまた事実である。大雑把に考えるのなら「嫌がる人がいるなら使わない方がいいんじゃないの?」「差別する気持ちがないのなら蔑称と言えないのでは/言葉狩りの一種なのでは」「そもそもカジュアルに使っていい用語なのか(潜在的差別意識があるのではないのか)」等々脳内で決着がつきそうにない。うーんもう蔑称を蔑称として使う人全員消せば解決するんじゃないかな!正直なところ、蔑称で呼ばれる経験をしたことがないから(気づいていないだけかも)すこし私にとっては想像しにくいところでもある……。頑張って差別意識のない蔑称を使われる様を想像してみても「おっ、物知らずさんなのかな」で終わってしまう気がしている。わたしに想像がつかないからといって傷つかない人が消えるわけでもないし、傷ついている人に「傷つく必要ないはずだよ」なんて乱暴に言うわけにもいかないわけで……。本書では「差別意識なく使う若者がいる反面、差別の一助として用語が使われているのは揺るぎない事実である」といったふうに描かれているので、とくにそう感じた。