だいたいうろ覚え

物忘れが激しくなってきたので備忘録

小袖日記 柴田よしき

再読。

母親が買ってきたはずだけど、母親にはその記憶がないと言う。

あらすじは、落雷の衝撃で平安時代のひとと主人公が入れ替わってしまい、源氏物語作成のお手伝いをするというちょこっとミステリー要素あり、な話。

 

初回読んだ時はそこまで気にならなかったが、今読むと少し苦手だなと思ってしまった。なんでかというと、この主人公が「なかなかのフェミニスト」だからだ。なかなか、というのは、うーん、私はクソフェミだと思うので、そう表記する。

フェミニズム小説ってなんだ?という話にもなってしまうんだけど、この小説におけるフェミニズムの流れというのは下記のようだと思う。つまり、男社会の被害者である平安女性の暮らしを対面し、それに対する不満のぶちまけ。ただそれは現代でも同じだという不満。いずれの時代でも制約つきものなので、その時代の中で懸命に幸せを探すしかないという結論。

け、結局結論が抑圧を受け入れろという話なのか!!!!??あれだけ男性主体社会にギャースカいってたのに!?源氏物語も同じ理由で好きじゃないって主人公に言わせているのに!?

そしてそして主人公は、元の世界で不倫してるというのだ。最終的には、つまらない恋なんてやめよう、不倫男と決別しよう、みたいな話に落ち着くのだが、不倫してた自分への内省はあまり見られない。旦那の不倫で辛い思いをしたという人の話を聞いてなお、マジで相手の配偶者に対しての感情ゼロ。そのわりに男に対しては優柔不断だとかなんだいうわけだけど。自分棚上げがすぎていっそ清々しい。不倫相手が先導した加害者ではなく、主人公も積極的な共犯関係なんだけど……??

私の意見に過ぎないけど、不倫って人間として誠実さをかけた行為だと思うし、性別に関係なくフラットな社会を作ろうとする(私の)フェミニズムとは逆を行く行為だと考えているので、さっき主人公がクソフェミってかいたけどこれがフェミニズム小説として消費されてたら悲しい。

 

「男たちは女に、はかなさや頼り無さ、無力であることを求めるのだ。小柄で楚々としていて、自己主張せず、男の言いなりになって男の背中に隠れたがる女を。(中略)強い女を愛せる男が本当に強い男であって、か弱い女を守ろうとする男は、自分より弱い存在が欲しいだけのこと。」

いや、この文めちゃくちゃ男性に対する悪意感じませんかね……。人間を強い弱いで分類するな。そもそも、「強い女」を目指し続けるの自分に対する呪いだと思うのですが。そのあと、不倫してる自分には他人をあーだこーだ言えない、みたいな文が入るんだけど、取ってつけたような文章だとしか思えない。さんざんあーだこーだ言ってただろ。

 

源氏物語に限らず、歴史的な物語は現代と倫理観がズレている。そうした過去の作品をどう論じるかってこれまでもいろんな人が書いていることだとは思うけど、私はそんなに熱心に語ろうとは思っていない。歴史的な物語はそれだけで価値がある、というと語弊があるのだけど、例えば「日本初の物語!」とか「初めて口語体で書かれた」とか、そういうまさに「歴史」としての価値があるもので、それと現代における価値というのは分けて考えたほうがいい。昔の物語を「再評価」するのだったらまだ意味がありそうだけど、「倫理的じゃない!」って勝手に盛り上がるのはナンセンスだと思う…。あんまり言いすぎると、じゃあ最新の作品しか評価しちゃいけないのかみたいに拗れてしまうのでそこはうまくぼかしたい。ぼかしておいてください。

 

源氏物語の話したかったのにそこまで行く前に力尽きた_(:3 」∠)_