だいたいうろ覚え

物忘れが激しくなってきたので備忘録

エン*ゲキ#6 砂の城 感想

友人からチケットを譲り受け、初の紀伊國屋ホールへ。感想はもう、これに尽きます。

テオやばい……

主人公のテオという男はですね、最初はとっても優しい青年として登場します。ですがその化けの皮が剥がれる……いや剥がれない化けの皮がただただこわい。一貫して優しい男ではあるのだ。嫁であるエウリデュケに向かって何度も「いいよ許すよ」と投げかけるし、「ごめんなさい」も言える。働き者だし、なんでも応じてくれる。しかしあまりにも一辺倒な立ち振る舞いはさながら機械のようだ。"優しい男"ではなく"優しい男であるべきと振る舞う機械"。「嫁が悲しんでいる」のなら「声をかける」「そばにいる」。「嫁にひとりにしてと言われた」のなら「部屋を出る」。状況を鑑みて行動するのではなく、事象と行動が結びついているような人だ。劇中、「自分がない」と言われていたテオだが、他人も彼の中には存在しない。

そんなテオだが、悩みを打ち明ける相手がいた。その相手ことレオニダスは元奴隷、実は王家の血筋であると発覚し城に連れていかれるも無実の罪で追放されたという経歴の持ち主だ。彼らは共に愛し合う、のだが。テオは"本当に"レオニダスを愛しているのだろうか?きっとテオはレオニダスを愛していると言うし、テオのどこを開いてもレオニダスを愛していると書いてあるにちがいない。しかし、きっとテオはエウリデュケに「殺して」と言われたらレオニダスにしたのと同じ振る舞いをするだろう。

レオニダスはテオの本性(隠してないから本性というと語弊がある気がする)に気づいていたのだろうか?気付いてはいない気もする。テオはまだ、彼の前では状況と行動の齟齬をつくっていない。悲しいことだが、人は相手を深く知らずとも愛してしまえる。

とはいえ、レオニダスがテオに救われ、テオを愛し、テオに変えられたことは確かな事実だ。そしてそれがゲルギオスにも伝播し、あの暴虐な太子すら変えてしまうのだから、愛が本物かどうかなんてきっと大した問題ではないのだ。最後に笑うのが、変わらずに己の野心を燃やしていたバルツァなのは皮肉な結末といえるだろう。

 

あまり見ないジャンルの舞台だったから、とにかく終始圧倒されました!即興!?

アンサンブルの表現がすごかったなあ。最初の方の、エウリデュケの式準備のとこで腕を扉に見立ててそこをエウリデュケが開いて飛び出していくところとか、レオニダスが城に行ってすぐ〜投獄までのところとかとくに印象深い。あといろいろ…濃かったんで驚いたり。アデルいいやつ。街出ていかないでくれ(;ω;)最後のゲルギオスの演説、話の流れ的に死んじゃうんだろうなと思いつつも魅入っちゃったなあ……かっこよかった。それまでの横暴な感じかつ不安定な感じが良い感じに布石になっていた。あとテオのあの感じ、演じ切れるのほんとすごいよね……エウリデュケへの暴言と謝罪を交互に畳み掛けるのホントこわかったし、共依存とかDV男の解析度高い!一番盛り上がってるふうな場面がテオが首つった横で行われるのすごい。最後にゲルギオスが毒殺されてしまうの、理不尽性を高めるためなんだろうか?もう、絶対ハッピーエンドにさせないぞ感が端々から伝わってきました…。