だいたいうろ覚え

物忘れが激しくなってきたので備忘録

愛おしくも優しくない世界 感想

三年前に撮影された自主制作映画、見て参りました。

愛おしくも優しくない世界

企画・脚本・監督・プロデューサー 高橋茉由

LGBTサイコパス精神疾患・ファンタジーをテーマにした四つの短編からなす長編作。

 

①檻の中のうち

女を監禁している臆病な男とそれを見守る死神の話。共依存の成れの果てだと思って見ました。一見男が支配しているように見えるけど、お互いがお互いを追い詰めてる感じ。(性)暴力に及ぶのは男の方だけど、最後にうずくまる男を抱き抱えて笑う女のところとか。途中で仕事の電話に出る男が快活そうで、「あー外面いいんだよね」と思ったり。男の感情の起伏の激しさが説得力を出してた、と思う。外で普通に笑ってる女の写真を眺める男のシーンとか、髪を洗ってあげたり整えたりするシーンが好きで、女への愛情を感じ取れたのもよかった。男の目がすごく良かったなあ……。女の人は壊れちゃったんだね。終盤死神が見えたということは死んじゃうのかな?

この流れで言うのめちゃくちゃ危ないやつみたいなんだけど、わたし共依存モノが好きで!一種のユートピアだと思っている節がある。できることなら世界は二人で完結しててほしいけど現実(?)は難しいね!好意のバランスが釣り合っていればまだどうにかなるのかしら。でも女も男を支えようとした結果だと思うから、やっぱり壊れちゃうか。監禁したのがよくなかったね(笑)独占欲が一番難しい。人ごとではなく。

外鍵をあんなにグルグル巻きにしたら通報待ったなしだし、ヨーグルトはしばらく食べれそうにない。

 

②残影

テロで恋人を亡くした女の話。精神疾患サイコパスLGBTを並べるの悪手だと思うんだけどよっぽど描きたかった話なのかな。というか、家族葬にするとはいえ(恋人でなくとも)ルームシェア相手にも最期の挨拶をさせない両親冷たいな……。母親は理解できないけど、と言うけど挨拶させてもらえて良かった。挨拶するのに親の許可いるの本当に辛いな。誰のための弔いなのか。家族制度の弊害という気もする。

 

③あなたのために

解離性同一性障害の人とヒモ男の話。解離性同一性障害の人はそれぞれの人格で別々の人間に性を売っていて、収入を得ている。そしてその金を男に貢いでいる。死神は終始わからないという顔をしていたけど、ハッピーエンドだなあ〜って思いました。別の女との間に子供ができたときはひやっとしたけど、なんか普通に男も「お前の子なら」みたいな可愛がりをしだしていたし、幸せそうじゃん!いわゆる健全じゃない関係性なんでしょうけど、壊れなければそれは幸せと言うんだよ。そして(解離性同一性障害のこと全然知らないで言っていいかわからないが)障害の類は病気なのかもしれないけど不便を感じなければ障害ではないと感じる作品だった。男の内面が見えづらいからサイコパスなのかなとも思ったけど、どうだろう。人間的な感情に基づく行動とは違って、「こうすれば金がもらえる、快適に暮らせる」という目的のために動いている感はあるけど、最後赤ん坊の声に音楽活動邪魔されても余裕そうだったしなあ。

 

④繋がれども

死神と死に際の老女の話。死神しゃべるんかい。①〜③を見てきた死神が「理解しがたい人間の営み」について理解をしようとする。そして老女を看取ることを決意した死神は共に生活を始める。昔、一人でいることを選択した老女だが、それでも一人は寂しいと涙をこぼす。個人的に孤独死に怯えている私にとっては一番怖い話だった。最後死神と老女が性行為してたけど最期に求め寂しさを埋めるものが性ってちょい乱暴な気もする。まあこの老女はそうだったんだな……。相手が死神じゃなかったらあまりにも老女のための物語感強くて見てらんなかったけど、死神だし、ファンタジーだし、まあ。。という落とし込みができた。

 

4作を繋ぐのは「性愛」であり、そして「さみしさ」だ。さみしさは独占欲を助長し暴力となってパートナーを閉じ込めるだろうし、恋人を亡くした者には性別に関わらず平等にさみしさが覆いかぶさる。一方通行な献身に私たちがさみしさを感じるのは、私たちが「報われたい」というさみしさを内包しているからだ。

さみしさは放っておいても自然に消えることはなく、それどころか勝手に自身を増強させ精神を蝕むものだ。さみしさを癒すには老女のように、人に寄り添ってもらうしかないのだろうか。

 

クラウドファンディングの作品紹介ページがわりとそのまんまで、なんならオチまで書いてあって、本編でなにかもう一押しあるのかと思ってたのでそういう意味では物足りなかったなと思った。

四話のクレジット、真くんと香澄逆になってますよ(小声)