だいたいうろ覚え

物忘れが激しくなってきたので備忘録

しゃべれどもしゃべれども 佐藤多佳子

これも再読。本棚ひっくり返して手当たり次第に読んでいるので、まあだいたい再読なんだけど。多分実家にあった本。

 

話の内容は、落語家の主人公が吃音の従兄弟(良)と会話の苦手なおねーちゃん(十河)とイジメにあってるらしい男の子(村林)とあがり症の元プロ野球選手(湯河原)と落語教室をやっててんやわんや〜な感じ。

 

主人公が落語家なだけあって(?)地の文もなかなか粋な書き味である。

落語…小さい時に分厚い落語集が何故か家にあり読んだことがあるし、本編にも出てくる「まんじゅうこわい」はすごく好きだったな。落語家によるオタクパロディ落語は見に行ったことあるけど、古典落語は見たことないんだよなあ。いつか見たい気持ちはある。

 

主人公の三ツ葉は喧嘩っ早いし、子供相手に手をあげちゃうし、全然理想の人間なんかじゃないけど、面倒見がよく芸に対して真摯なことが丁寧に描写されているのですごく魅力的なキャラクターのように感じられる。落語を習いに来たメンバーはそれぞれあまり人に言いたくなさそうな悩みを抱えており、三ツ葉はそれにさまざまなアクションを起こす。このときの各々の距離感が心地よい話だなと思った。けして解決はしないし、深く踏み込むこともしない。山場である村林のクラスメイトのことも、前進の御膳立てしかしない。でも表面的な干渉であることに自覚的で、だからこそ寄り添うようなアクションだ。解決はあくまでも当人に任せられている。行動を起こすまでに寄り添うような、そんな感じがした。物語自体もご都合主義丸く収まりました的な話でもなく、うまくいくところもあればうまくいかないところもある。それの塩梅がちょうどよく思えた。